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浮遊の正体・1

 

 昨日は、はじめて申し込んだ派遣バイトのために、とあるアリーナへ。自宅からかなり遠く離れているけれど、もちろんそこでのライブ鑑賞は何度もしているので、行き方はなんとなく分かる。それより、朝早くの集合、そして前日緊張のあまり眠れなかったというのもあって、早朝から一駅、二駅と寝過ごしてしまうのではないかという不安のほうが強烈だった。結局は、それよりもさらに緊張が勝って、目はパッチリ開いたまま、あくびすら出なかったのだけれど。

 

 乗車中は、僕は世間の多くの大学生と同じように、スマートフォンの画面に釘付けだった。音楽プレイヤーやSNSはもちろん、位置情報を共有するアプリまでも楽しんでいた。

 いま振り返れば、たしかにそのときスマホは使い詰めすぎられていた、のかもしれない。裏の裏の裏であらゆるシステムが休むことなく、動いている。使い始めて1年が経過し、そろそろどこかがおかしくなってもおかしくない、老体のようなスマホだ。

 そろそろ違うアルバムにしようかなとプレイヤーをいじっていたとき、突然、プレイヤーの画面からホーム画面に遷都し、ホーム画面にあるさまざまなアイコンが揺れ始めたのだった。ひとつひとつのアイコンが揺れるのではなく、大きく上下左右円を描くように。まるで自分がめまいを起こしてしまったか、もしくはそれらのアプリケーションが生命を宿し、自由に動き回れる権利を獲得したかのように。

 

 結論を先に言うと、これはiPhone独特のバグらしい。復旧したスマホで調べた結果「バグ」の一言で片づけられたことは、今思うととても癪だ。なぜなら、今でもその動きを思い出すと、本当に怖くて、鳥肌がビッシリするから。ハリー・ポッターが、図書館で本を探して、適当に開いたら顔がすごい勢いで飛び出してくるみたいなシーンがあったような気がする。自分の感受性では、それが一番近しかった。

 実は、あまりにもそのような事例のヒット数が少なかったので、いまだ自分を疑っている。それこそ、寝不足や日々の疲れが原因なんじゃないか。それとも、その時にLINEで友達ともめていた怒りが体現してしまったんじゃないか。幻覚は、思いもよらないタイミングで来てしまうらしい。

 

(続く)