読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

"イロモノ"スタンダード?

 Twitterのプロフィールに、積極的なブログ運営をしていますよと、いかにも言いたそうな記述をしているのに、何の罪悪感もなくためらいもなく、2ヶ月間のブランクをいただきました。久しぶりにこのページを訪れて何よりも驚いたことが、今までは親しい人のあいだで消費されていた、自己満足にすぎないこのブログが、接触の機会がなかった人からコメントをいただける、外部向けのコンテンツに変化しつつあるということです。はてなブログに移行したから、というと大げさかもしれませんが、レイアウトの力は偉大です。今までの文章に、おしゃれな色がついたような感覚を自分でもおぼえます。それだけで嬉しいです。ということで、この2ヶ月の総括を。

 

 まず、6月28日、国立新美術館で開催されていた「マグリット展」のことを。恥ずかしながら、初めての美術館でした。それも自主的なものではなく(前々から少し興味はあったので、半自主的ではあったかもしれないけれど)、友達に誘われるがままに、と少し情けない。でもその子には、素敵な体験をさせてくれてありがとうと、お礼を言いたいです。というのも、いつか絵画を体系的に理解しようと思っていた僕にとって、マグリットはやさしかったからです。イマイチ美しさを見出せないまま、古典的な絵の前に居座るよりかは、電流に打たれたような衝撃を与えるくらい"イロモノ"(前者に比べ)の絵のほうが、大きな影響を与えてくれると常々秘めていた信条に、マグリットはピッタリでした。そして、将来コンテンツを創作する立場になるにしろならないにしろ(これがただの教養に終わっても)、これほど特徴的な「シュールレアリスム」という考え方は、やはり軽視できない魅力的なものでした。好きな絵は、ベタかもしれませんが、灰色の布をかぶった男女がキスをしているという絵「恋人たち」。不気味だ奇妙だ神秘的だ、と簡単にまとめることはできるかもしれないけれど、もう少し深読みしたくなる。この布が表情を隠すことに、どのような意味があるのか。これが正しいのかわからないけど、絵画の鑑賞練習ができたと思います。

 

 次に、7月18日、19日のSEKAI NO OWARIの大イベント「Twilight City」。思ったよりも多くの感動を得てしまったために、安易に文章化することはなるべく避けていたのですが、忘れないうちに書いておかなくてはいけません。僕にとっても初めてのスタジアムライブ体験だったので、開催のしらせを聞いたとき、どのような演出が可能なのかいつものように予想しづらかったことが、衝撃をさらに大きくしました。行っていない方にも、様々なメディアで「プロジェクションマッピングがすごかった!」「電車が空を飛んで、青白い光を降らせた!」「色のついた炎がリズミカルに飛び出た!」と演出については8割方伝わっていると思うので、それ以外のことを記します。

 

 ひとつは、ロッキング・オン社の山崎さんが「激刊!山崎」で取り上げているように、Saoriのピアノプレイが格段と進化していたことです。今までは、音源通り失敗せずに着実に弾き、目立つようなフレーズは控えることで(良く言えば"出し惜しみ")、己の技術力をアピールしていたように思えたのですが、今回は"攻め"ていた。ゲスの極み乙女。の、ちゃんMARIのような、耳に残るフレーズを弾くようになったのです。新曲「ANTI-HERO」を聴いてもわかりますが、印象的だったのが「ファンタジー」のAメロBメロ、裏で鳴っていたジャズピアノのようなオシャレなフレーズ。このライブは新曲解禁の影響もあり録音・動画撮影禁止だったため、公式サイドからの、早めの音源化が待たれますね。もうひとつは、今度発売になる新シングル「SOS / プレゼント」にも収録されている「Twilight City arranged」の2曲。過去にフジテレビ系列の音楽番組「僕らの音楽」「FNS歌謡祭」に出演した時、もしくは「THE天狗ズ」として渋谷PARCO前でゲリラライブを行った時から、アコースティク編成での披露をライブでも、と期待していたファンにとっては、感涙モノだったでしょう。「ピエロ」のFukaseとSaoriアレンジ (ここでもSaoriのピアノの腕が鳴ります)、「スノーマジックファンタジー」のFukaseとNakajinアレンジ。DJ LOVEのコミカルコーナーの前に、あの大規模な日産スタジアムをあえて小さく、いとも軽く、贅沢なことをやりこなした所が素晴らしい。昨年、雑誌のインタビュー等で「来年は久しぶりに聴かせるライブをやりたい」ともとれる発言をしていたことが、ピタリとつながりました。

 

 そして、その表題曲、つまりまだCD化されていない2曲「SOS」「プレゼント」についても触れておきたい。まず前者「SOS」は、深瀬の純粋無垢な声を最大限に活かした、策略的なスローバラード曲でした。わかりやすく例えるならば、サラ・ブライトマンでしょうか。Saoriが全編にわたる英語詞を担当、SOSを"Save Our Ship"ではなく、"Sound Of Silence"と形容していました。"Dragon Night"、"ANTI-HERO"のようなビートを刻む曲が連続していたこともあって、このドラムなしの曲は僕の周りではたちまち高評価ですが、本人も雑誌で語るように"かなり狂ってる"と思います。これをシングル盤として発売することを「勇気ある、素敵!」と簡単に片付けてしまうのには、少し躊躇しますね。上の文と同じような言葉ですが、少しマイノリティな"イロモノ"感がして、どうしてもセールスを心配してしまいますし(ちなみに、「ANTI-HERO」はまあまあの売上だそうです)、いずれアルバムに収録された時の違和感も気になります。それに対し、カップリング曲「プレゼント」は、「TONIGHT~会いに、走れ。ver.~」をラジオから初めて聴いた時の感覚に似たモノをおぼえました。セカオワの魅力のひとつとして、"どこかで聴いたような曲だけど、元ネタが思い出せない"という要素があると思います。つまり、スタンダード…まさにこの曲は、さすがNHK合唱コンクール課題曲、と言いたいくらいその魅力であふれていて、またその雰囲気を壊さないアレンジ(無理に例えるならば、サザンオールスターズの「彩〜Aja〜」のような)に仕上がっています。あの「花鳥風月」に匹敵するほどの、馴染みやすさも十分。なぜ、これほどこの曲を贔屓するかと言えば、またライブの話に戻りますが、1日目、この曲直前の、SaoriのパーソナルなMCがとても良かったからです。正直、毎回予定調和気味な「幻の命」よりも泣けた。僕は本来、そのような物語性を排除して、純粋に曲として評価したいと努めていたのですが、「銀河街の悪夢」を初めてライブで聴いた時くらい、感動しました。…話がそれましたね。

 

 そこでまとめると、先ほどの「聴かせるライブ」発言につながるものもありますが、この曲のアレンジにしろ、「ANTI-HERO」のカップリング曲「Home」にしろ、SEKAI NO OWARIは最近、"原点回帰のようで原点回帰じゃないスタンス"をとろうとし、"スタンダードJ-POP化"に、実は重きを置いているように思えます。Fukase・きゃりーぱみゅぱみゅの恋愛関係やTwitterでの騒動など、なにかと世間から俗者扱いを受けてしまう彼ら。そんな世間は「SOS / プレゼント」をどれくらい受け入れてくれるのでしょうか。もし上手く行かなかったとしたら、彼らの確信犯的な行動がそういう評価に影響しているということは間違いない…もしかしたら、これは"この先"を見据えた地盤固めなのでしょうか。今年、(予定を含めれば)CDはすでに3作品。「セカオワっていろいろあったけど、実はいい曲たくさん作ってるんだよ!」という評価を期待しているのでしょうか。…若干、妄想が過ぎて意味不明になっていますが、いつも僕らは、セカオワのいく末に虜になってしまっていることは間違いないですね。

 

(総括は続く)