読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

卒業後のさみしさと仄かな野心

まともな日常

そういえば、「卒業式で泣かないと、冷たい人と言われそう」なんて歌詞が昔の歌であった。誰よりも学校を楽しんだという自信があったけれど、生徒会や体育祭の応援団長、いわば「華」のような役職を務めたことが無かった陰キャラの自分(唯一、図書委員会には6年間所属し、5年目には委員長を務めたが、申し訳ないが「華」とは呼べなかった)は、この歌詞どおりに、そこまでオイオイ泣かないでもいいんじゃないか、と内心バカにしながら、澄まし顔で「またいつか会えるよ」なんてやりこなすのかと思っていた。前日の卒業式予行練習に行っても卒業の実感がわかなかったし、卒業生代表が在校生に対する答辞を述べるまでは、何も来るものは無かった。

 

 「私たちが楽しく過ごしたこの瞬間は、もう思い出の中にしか姿を現しません」この一言にやられた。よくドラマで、目から溢れんばかりの涙を、そのまま頬をつたわせる人を見る。僕ならすぐ触感が気持ち悪くて、袖で拭ってしまうのになあと思っていた。でも、この時は違った。その少量の水を拭き取るのはとてももったいないように思えたのだ。次から次へと、両目から溢れ出る僕の涙には、AO入試で失敗した時に流した涙より、きっと大事なものが詰まっていたのだろう。僕の学年は天才秀才が多かったから、自分の行く大学のランクに引け目を感じていたこともあった(事実、僕は合格校の校内掲示を拒否している)。卒業後は、友達整理の対象になるのだろうと思っていた。けれど、彼女の答辞を聞いている時もしくは最後の校歌を歌っていた時、なぜか他のクラスメイトに温かく迎えられている気がしたのだ。夜のパーティーでは笑顔で、相変わらず仲が良い人とも、クラスが離れて疎遠になってしまった人とも、ツーショットを撮った。その時すかさず、卒業アルバムを取り出して、「寄せ書きくれ」と要求できなかったのが心残りだったが(ちなみに僕は、「出世して会おうぜ」とか生意気なことを書こうとしていた)。

 

 その中の一人が帰りの地下鉄でふと放った一言がある。「お前みたいなすごく仲良しなヤツは、またすぐ会えそうだから別れる時に悲しいとか、そういうことは全く思わないんだよ。だけど、まあまあ仲良かった人は、卒業後遊びに誘いにくいから、このまま一度も会わなくなっちゃうんだろうな」。すかさず僕は「20歳になった時とか、22歳になった時に集まるイベントがあるらしいよ」と"元気を出して"の意でフォローをいれたけれど、「いや、だけど来るかどうか、俺が来れるかどうかわからないじゃん」とバッサリ。今一度、この言葉を咀嚼してみると、たしかに、大いに同意できる。卒業式から2週間以上経った今、ようやく「それらしく」哀しくなってきた。卒業はやっぱり、哀しいものだ。ふと残されたやり場のない気持ちを顧みると、またFacebookに載せられた修学旅行の写真を見返していると、どうもカラ元気にはなれない。

 

 でもその反面、自分の軸は着実に完成しようとしている。これから4年間、どう過ごしていくかをずっと考えるようになった。「学歴よりも大学で研究する内容」そう吹っ切れた自分(といっても、学歴が立派な方をけなしているわけではない。自分には出来なかった事なのだからと、むしろ畏怖の念を抱いている)に格好がつくように、何か勉強をしておいたほうがいいのか、本でも読んでおいて教養を深めておいた方がいいのか。

 

 研究内容には直接関係ないけれど手始めにと、林真理子さんの「野心のすすめ」を図書館で借りて読んだ(相変わらず速読なのか、1日で読んでしまった)。元コピーライターの小説家ということで、ずっと気になっていた存在だ。内容は、端的にあらわせばタイトル通り「野心を持ちなさい」ということであった。「野心」という前輪と「努力」という後輪をしっかり回していれば自分の理想に近づけるし、不思議なことにやがて「運」もついてくる。そのようなことが自叙伝形式で語られていた。林さん本人は"自慢話が過ぎたからあなたは嫌になってくるかもしれませんね"と、本書で何度も意識していたが、ぜひロールモデルにしたいと思った。手段を選ばない、ではないが少し泥臭くても上を目指す。「鶏口牛後」の精神で突っ走ろうと意気込んでいる自分を加速させるために、さらに油を継ぎ足すような本であった。

 

 また本書には「ルンルンを買って〜」の頃に比べ、今の若者で林真理子の認知度がやはり低いということも、自虐的に書かれていた(まあ当たり前のことなのかもしれないが)。でも加えて「世に出ようとする若い方々(中略)みなさまの背中を少しでも押してあげられる一冊になれば、これほどの喜びはありません」と書かれている。僕も肯定されたような気持ちになりパワーをもらったので、ぜひおすすめしたい…と、本当はもっと書けるネタが他にもあったかもしれないけど、「覚めやらぬうちに」と読了直後の感想を自分の卒業と絡めて書いてみた。他のネタは、また思い出したら書きます。読書はやっぱりいいね。次は何を読もうかな。